モンゴルというとチンギス・ハーンが建てたモンゴル帝国、日本に攻めてきた元寇などの歴史と共に、大相撲で活躍するモンゴル出身の力士たちのことが思い浮かびます。
また、大草原で生活する遊牧民や彼らの住居であるゲルなども知られています。しかし、それ以上のことはイメージできない人が多いのではないかと思います。
今回は近くて遠い国、モンゴルの文化についてご紹介します。
1.モンゴル文化を象徴する遊牧民について
遊牧とは
日本とモンゴルの国交が正式に樹立したのは1972年とかなり最近です。モンゴルは国土の79%が草原という「草原の国」。です。また、平均標高は1500mなので「高原の国」ともいえます
このような地理的条件から畜産が発達したのですが、牧草地をもたずに移動する「遊牧」が伝統的なスタイルになりました。
近年では都市化、近代化により定住をする人が増え、遊牧をしているのは人口の4分の1程度になったといわれています。
それでも長年モンゴルを支えている遊牧民のライフスタイルは、モンゴルの文化を特徴づけています。
遊牧民が暮らすゲルとは
ゲルとは遊牧民が暮らす、組立て式の家です。木を組み、上にフェルトを乗せて紐で固定します。馬車やラクダに乗せて移動し、組立ては大人5,6人なら2,3時間ほどで完成します。
ゲルは丸い形をしていてドアを南側に向けて建てます。ゲルに窓はないので、南に向けたドアから日光を取り入れるのです。
ゲルの正面はチベット仏教の神棚、右は台所と女性の居室、左が男性の居室になっています。
遊牧民の衣装デールとは
デールとはモンゴル族の民族衣装です。上衣は縦襟で丈は長いのですが、乗馬がしやすいようにデザインされています。
夏は薄い生地のデールを着るなど素材を工夫するほか、冬は毛皮、春秋は綿などを合わせたりして、遊牧民は1年中デールを着用しています。
下にはズボンをはきます。デールには帯や帽子、靴もコーディネートされます。帯や帽子には運が宿っていると信じられているので、とても大切に扱われます。
靴は牛革で作られますが、先端が反り返っています。これは、靴先で大切な牧草の生えている地面を荒らさないためです。
2.モンゴルのコミュニケーション文化について
モンゴル語について
モンゴル語と日本語の文法はよく似ています。語順が全く同じなので、単語を覚えればモンゴル語が使えるようになります。一方母音は7つで、日本語にない発音があります。
伝統的なモンゴル語の文字は縦書きですが、日本語とは反対に左から右に書いていきます。この文字を筆で書く書道もモンゴル文化の1つですが、横書きができないという欠点があります。
現在一般的に使われているのはロシアのキリル文字で、教科書や新聞はすべてキリル文字で表記されています。
一部にモンゴル文字復活の気運もありますが、日常生活とはかけ離れた文語文字との意識が浸透していて、なかなか難しいようです。
身体的なコミュニケーション
モンゴル人は足を踏んでしまったり、足がぶつかったりすると握手をします。握手は「敵意はありません」という表明なのです。
タブーの動作もあります。どんなに親しい間柄でも、ふざけてでも、モンゴルでは人の頭に触ってはいけません。
モンゴル人の名前について
モンゴルでは愛する子どもが悪魔にさらわれないよう、ネガティブな意味をもつ名前を付ける習慣があります。
「フンビシ(人でなし)」、「ネルグイ(名無し)」などがその例で、中には「バースト(ウンコ)」なども。
3.代表的な料理とは?モンゴルの食文化について
赤い食べ物と白い食べ物
赤い食べ物は肉類、白い食べ物は乳製品のことで、この2つがモンゴルの食文化の基本です。主食は米や小麦ですが、肉が主食並みの量である場合も少なくありません。
豚や鶏はあまり食べられず、羊や牛、馬、地域によってはラクダが多く食べられます。肉は煮る、蒸すなどでしっかりと加熱し、香辛料はあまり使われません。
モンゴルではウシ、ウマ、ラクダ、ヒツジ、ヤギなどから乳を取りますが、生乳を飲むことはほとんどありません。乳からはクリーム状、固形状、飲料などにした数多くの乳製品が作られます。
モンゴルの代表的な料理
「チャンスンマハ」は羊肉を茹でたものです。味付けは塩だけ。食べる時にはタレを付けますが、シンプルに肉の味が楽しめる、豪快でモンゴルらしい料理です。
「ボーズ」は小麦粉の皮にひき肉を包んだ、小さな肉まん、または小籠包のような食べ物です。それを揚げたのが「ホーショル」で、世代を問わず人気があります。
モンゴルの特徴的な飲み物
馬乳酒は文字通り馬の乳から作られる酒で、アルコール度は1~2度と低めです。酒というよりは栄養ドリンクのように考えられているようです。
ミルクティーはモンゴル人が大好きな飲み物ですが、砂糖ではなくて塩を入れて飲みます。
4.その他のモンゴル文化
音楽
「ホーミー」は1人の人間が同時に澄んだ声と濁った声を出すという、珍しい歌唱法です。
楽器では竿の先端が馬の頭の形をしている「馬頭琴」が有名です。2弦の摩擦楽器で、弓でこすって音を出します。
馬頭琴の音は幸せを運んでくるとされ、日常生活でよく演奏される楽器です。
モンゴル相撲
相撲は強さを重んじる遊牧民文化の1つとして発展しました。手を着いただけでは負けにはならず、膝や肘、背中が着くまで戦い続けます。
最後に
以上、モンゴルの文化をかいつまんでご紹介しました。
モンゴルを訪問する機会はあまりないかと思いますが、日本に住むモンゴルの人たちも数多くいます。
イベントなどでモンゴルが紹介されることもありますので、目を向けてみてください。