新型コロナ感染症を予防するための「新しい生活様式」として、「三密を避ける」とともに、クローズアップされているのが「ソーシャルディスタンス」です。急に、ソーシャルディスタンスという言葉が、日常的に使われるようになりました。
なんの疑問も持たず、使っていますが、本当のところは、どういう意味なんでしょう?今さら、人には聞けませんので、詳しくご説明します。
目次
1.ソーシャルディスタンスとは?
ソーシャルディスタンスとは、英語で書けば、Social Distance=社会的距離ということになりますが、社会的距離とはどういうことでしょうか?
感染予防のために、ソーシャルディスタンスを取るというのに、なにか違和感がありませんか?家庭内で、食事をとる場合も、間隔をあけたり、向かい合うことを避けたりする場合でも、社会的距離という言葉を使うのは、なんだか落ち着きません。
ソーシャルディスタンスという言葉は、今まで、どういう文脈で使われてきたのか、もともとの意味はどうだったのかを考えてみましょう。
2.もともと、ソーシャルディスタンスとは、どういう風に使われてきたのか?
ソーシャルディスタンスとは、もともと、社会学の用語です。アメリカの社会学者パークが提唱した概念で、個人と個人、あるいは集団と集団との間における親近感と敵対感といった感情のレベルの程度を表すための尺度です。
そのため、心理的なものを含む人と人、集団と集団との距離を表します。社会的孤立や民俗・集団の違いによる距離感、むしろ、体ではなく心の距離のことで、相手との心理的距離を意味し、差別などの研究で用いられる言葉です。
3.フィジカルディスタンスとは?
前項で挙げた理由で、最近では、ソーシャルディスタンスではなく、フィジカルディスタンス(フィジカルディスタンシングとも)という言葉を使う傾向にあります。
WHO(世界保健機構)は、社会的距離を物理的距離(=Physical Distancing )という言い方に改めましたので、今後、フィジカルディスタンスに移行していく可能性があります。WHOは、「コロナ禍であっても、人と人とのつながりは引き続き保ってほしい。」と言っています。
日本の自治体でも、大阪府泉佐野市、大分市・山口福岡県小郡市などでは、フィジカルディスタンスという言葉を使うと明言しています。
フィジカルディスタンスとは、physical=物理的、身体的という意味ですので、新型コロナの感染予防のためには、社会的距離ではなく、身体的、物理的距離の確保が重要ということです。
4.ウィズコロナの今、どのぐらいの距離を開ける必要があるのか?
日本の厚生労働省では、2m以上離れることを推奨しています。日常生活で、身体的距離を保ち、会話で飛沫がかからない、最低限の距離です。実際には、会話による飛沫は、2~3m飛ぶとされているので、国がいう2mは、目安です。
ちなみに、WHOでは、「少なくとも1mの距離を保つ」ことを勧告しています。アメリカでは、6フィート(=約1.8m)が推奨されています。
ただ、咳やくしゃみでは3m以上飛ぶこともありますし、しばらく浮遊していることもありますので、2mという距離に過信せず、距離とともに、マスク着用や換気などにも注意する必要があります。
5.今後、どのように使われていくのか?
コロナ禍において、長期的な自粛によって、人々は、疲弊し、孤立・疎外感を持ちがちです。
そんな今だからこそ、社会的距離ではなく、身体的距離を空けても、社会的つながりを保つフィジカルディスタンスという言葉に置き換わっていくと考えられます。
まとめ
トンネルの出口が、まだまだ見通せない今だからこそ、できるだけ実態に合った言葉を使って、誤解などを防ぐことが大切です。あなたがお住いの自治体ではどうですか?