恋を詠んだ和歌を知りたい…と思っていませんでしょうか。
今回の記事では、昔の人が詠んだおすすめの恋愛和歌を厳選して紹介しています。
目次
1.知っておきたい!昔の人が詠んだ恋愛の和歌まとめ
ほのかに恋心が芽生え、恋が始まり、日ごと募る思い!両想いになったらなったで、幸せと不安が入り乱れる・・・。二人で過ごした甘い夜もあったけど、一人で過ごす夜の何と長いことか!
そして、ずっと続くと思っていた恋の終焉。昔も今も、世の中に男と女がいる限り、繰り返される恋愛模様。昔の人が恋を詠んだ和歌に慰められ、共感してください。
片思いの恋愛和歌
夏の夜の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ
「夏、多くの草の中でひっそりと咲いている姫百合のように、あなたに知られていない私の恋は苦しく切ない。」
大伴坂上郎女
こんな片思い、いつからしていないだろう?と思い出させてくれる恋愛の和歌です。こんな気持ちを持てた時が懐かしくなりますね。
恋の始まりを表す恋愛和歌
忍ぶれど色に出にけり我が恋はものや思ふと人の問ふまで
「心ひそかに思っていたけれど、『恋でもしているの?』と人から聞かれるまでに、私のしぐさに出てしまったようだ。」
平兼盛
恋すてふわが名はまだきたちにけり人知れずこそ思ひそめしか
「『恋をしている』という私の噂がもう立ってしまった。誰にも知られずひそかに思い始めたばかりなのに。」
壬生忠見
筆者は、高校の古文で一首目の歌と出会いました。
募る想いを表す恋愛和歌
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを
「恋しい方を思いながら寝たので夢にあの方があらわれたのでしょうか?夢とわかっていたら目を覚まさなかっただろうに」
小野小町
もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞみる
「恋に悩み物思いにふけっていてふと見たら、沢に蛍が飛んでいる。私の身から彷徨い出た魂ではないだろうか。」
和泉式部
恋をすれば、寝ても覚めても思うのはあの人のことばかり。逢えないのなら、せめて夢の中でも逢いたい。昔も今も変わらないそんな気持ちを表しています。
恋の成就を表す恋愛和歌
君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひぬるかな
「あなたと逢うためなら捨てても惜しくはないと思っていたわが命ですが、あなたに逢えた今は、あなたと逢うためにいつまでも永らえたいと思うようになりました。」
藤原義孝
「あなたに逢うためなら命も惜しくない!」こんな情熱的な恋がしたい!と思わせる和歌です。
後朝の恋愛和歌
明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな
「あなたと一緒に過ごした甘い夜が明けてしまう。また夜が来ることはわかっているけれど、それでも朝が来るこの時間が恨めしい」
藤原道信
後朝とは、「こうちょう」または「きぬぎぬ」と読む、平安時代の古語です。
愛しの女性と結ばれ、甘い夜を過ごした翌朝のことで、後朝の歌とは、翌日、男性から女性に贈る歌のことです。
こんな歌が翌朝、男性から贈られてくるなんて、うっとりしますね。
しかし、ともに甘い夜を過ごした者が朝が来るのを恨めしいというのは、「ロミオとジュリエット」にも同じようなシーンがありました。洋の東西を問わない気持ちなのかもしれません。
ひとり寝のさみしさを表す恋愛和歌
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
「長く垂れ下がった山鳥の尾のように長い秋の夜を、私は恋しい人にも逢えずひとり寝ることであろうか」
柿本人麻呂
嘆きつつ一人寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る
「あなたが来ないことを嘆きながら一人で寝るが明けるまでの時間の何と長いことでしょう。あなたはご存じでしょうか?」
右大将道綱母
ずいぶん前、加藤登紀子の「ひとり寝の子守唄」という曲がヒットしましたね。古今を問わず同じ思いなのでしょう。
恋の終焉を表す恋愛和歌
忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな
「忘れ去られる私のことはいいんです。ただ、永遠の愛を誓ったあの人が、誓いを破ったことで神罰が下って亡くならないかと惜しまれます。」
右近
右近は、藤原敦忠と両想いでしたが、気の多い敦忠の心変わりを知った時に詠みました。自分のことより、捨てた相手のことを思う女心。本心から彼の死を心配しているのでしょうか。
願っているってことはないでしょうか。ちなみに敦忠は、37歳の若さで亡くなっています。
最後に
恋愛の段階に応じたそれぞれの和歌を集めました。時代が変わっても、同じ気持ちなんだなぁと共感できましたでしょうか。
自分の思いをこんなふうに和歌に託せるのは、ある意味うらやましいですね。