
小・中学校の国語の教科書でも和歌は紹介されています。冬休み前には、百人一首を覚えさせられませんでしたでしょうか。その狙いは、古典に触れ、その調べ、リズムを体感することです。
和歌はあの短い三十一文字の中に、日本人の心のありようを端的に表しています。たとえ、自分が和歌を詠めなくても共感することはできます。
ここでは、日本の有名な和歌を10首選びました。まずは、声に出して読んでみてください。
目次
これぐらいは知っておきたい!日本の有名な和歌10選
日本の有名な和歌①「額田王の和歌」
あかねさす紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖ふる
(あかねさす むらさきのゆき しめのゆき のもりはみずや きみがそでふる)
額田王といえば、万葉集を代表する女流歌人ですね。
日本の有名な和歌②「小野小町の和歌」
花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
(はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに)
小野小町は、絶世の美女との誉れ高い、平安時代前期の女流歌人です。
日本の有名な和歌③「持統天皇の和歌」
春過ぎて 夏きたるらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山
(はるすぎて なつきたるらし しろたえの ころもほしたり あまのかぐやま)
持統天皇は、天武天皇の皇后で、第41代天皇。この歌で詠っている天の香具山の近くに、日本で初めての条里制を布いた藤原京を完成させました。
日本の有名な和歌④「柿本人麻呂の和歌」
東の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月傾きぬ
(ひむがしの のにかぎろいの たつみえて かえりみすれば つきかたぶきぬ)
柿本人麻呂は、飛鳥時代の歌人で、山部赤人とともに歌聖と呼ばれ称えられています。
日本の有名な和歌⑤「阿倍仲麻呂の和歌」
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
(あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも)
阿倍仲麻呂は、奈良時代の遣唐留学生で、唐で国家試験に合格し高官にまで登りましたが、日本への帰国を果たせずに向こうで亡くなりました。
日本の有名な和歌⑥「山部赤人の和歌」
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ
(たごのうらに うちいでてみれば しろたえの ふじのたかねにゆきはふりつつ)
山部赤人は、柿本人麻呂とともに歌聖と呼ばれ称えられています。この歌は、2014年の朝日新聞の「あなたの好きな和歌」で堂々の1位を獲得しています。
日本の有名な和歌⑦「西行の和歌」
願わくば 花の下にて 春死なん その望月の如月の頃
(ねがわくば はなのしたにて はるしなん そのもちづきのきさらぎのころ)
西行は、桜の国の桜の名所と言われる吉野に小さな庵を結び、3年間暮らしました。桜を詠んだ歌を遺していますが、後世の歌人に多大な影響を与えました。
日本の有名な和歌⑧「菅原道真の和歌」
東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて春な忘れそ
(こちふかば においおこせよ うめのはな あるじなしとて はるなわすれそ)
菅原道真は、学問の神様として崇められています。左遷され京から大宰府に赴く際に詠んだのが、この歌。
日本の有名な和歌⑨「平兼盛の和歌」
しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
(しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで)
平兼盛は、平安時代中期の歌人で、三十六歌仙の一人。たくさんの恋の和歌の中でも秀逸の句。
日本の有名な和歌⑩「倭建命の和歌」
大和は国のまほろば たたなづく青垣 山こもれる 大和しうるはし
(やまとはくにのまほろば たたなづくあおがき やまこもれる やまとしうるわし)
古事記では、倭建命(やまとたけるのみこと)と書かれ、日本書紀では日本武尊とかいてやまとたけるのみことと読みます。
最後に
「これぐらいは知っておきたい」という和歌を10首選びました。万葉集だけでも4500首の和歌があるわけで、古来より数えきれないほどの和歌が詠まれてきました。
その中で10首を選ぶのは無謀な試みかもしれません。人によって選択の視点が異なれば、また違う10首が選ばれることでしょう。
教科書等に載っている誰でもが知っているという視点で選びました。ぜひ、声に出して読んでいただき、日本語の美しい響きを堪能してください。